[JM:00285] Re: gnumaniak と coreutils について

Back to archive index

長南洋一 cyoic****@maple*****
2011年 5月 24日 (火) 12:28:15 JST


長南です。

すでに元木さんのメールが届いていますが、書き直さないで出して
しまいます。

赤星さんのメールより [JM:00280] 
>
> [ToDo]
>    ---- (一行省略) ----
> ・生成する manpage を configure のオプションで変更可能にする

これ、どういうことかわかりません。

> # もし、ご賛同頂けるようでしたら、JM Project の正式リポジトリとして作成
> # いただけると幸いです。

こういうことは、わたしのような一般メンバーではなく、コア・メンバーの
返事が必要だと思いますが、わたしの考えを書いておきます。

要するにこういうことですね。
1) coreutils に属するコマンドの man ページ (JM の配布では gnumaniak
   ディレクトリに属している) が古くなっている。

2) coreutils 開発元では info 形式のマニュアルを正式なものとし、
   man ページは、言わば簡易版マニュアルの位置づけで、 help2man を
   使って --help と --version の出力から生成するようになっている。

3) coreutils 開発元では、英語以外の man ページの配布をしていない。
   # 開発元は、将来も英語以外の man ページの配布をしないのですか。
   # coreutils パッケージを build するとき、configure のオプションで
   # 英語と他の言語の man ページを作成するようにする (当然、help2man を
   # 使って)、といった計画は開発元に存在しないのですか。

4) --help や --version の出力の元になる日本語の po ファイルの翻訳が
   最近 trans****@lists***** で一応完了した
   (大仕事だったと思います)。

5) そこで、赤星さんが coreutils に属する各コマンドの新しい man ページを
   help2man を使って作成してみた (もちろん、roff 形式のファイルとして)。

6) この作成した新しい man ページ群を JM のリポジトリに入れることは
   できないだろうか。そして、それが十分使用できるレベルのもので
   あることが確認できたら、古い gnumaniak の man ページのかわりに、
   こちらを JM で配布することにしたら、どうだろうか。

こういう理解でよいでしょうか。
わたしは基本的に反対しません。開発元が配布する man ページが新しく
なったのなら、翻訳の更新は必要なことですから。また、man ページの
翻訳・作成と配布をする組織が JM のほかにできるのは、誰にとっても
不便なことでしょうから。賛成する、と言わないところが微妙ですが、
それは以下に書くようなことがあるからです。考えがまとまっていないので、
思いつくままに書きます。

a) 上の 3) のコメントに書きましたが、coreutils 開発元が、各国語
   man ページを配布する、あるいは、build 時に各国語マニュアルを
   選択的に作成するようにする、という可能性はまったくないのですか。
   もし、そういう可能性が近い将来に (まあ、一二年以内ぐらいに)
   あるのなら、JM としては、あちらに任せてしまった方がよいと思います。
   そして、その man ページ群の翻訳がしっかりしているなら、gnumaniak の
   man ページを配布から外せばよい。

b) 赤星さんが作成なさった man ページを JM のリポジトリに含める場合、
   黙って使うわけにはいかないでしょう。coreutils の po ファイルの
   翻訳チームに連絡して、コントリビュートしていただく形になると
   思います。

c) やっと内容について語ることができます。新しい翻訳を二三見て
   みましたが、このままでは使えないところがあります。

   ひとつは、--help の出力では問題がないのに、help2man の出力である
   man ページでは問題があるところがあります。たとえば、ls の
   --author オプションの説明を見てください。

   # わたしは coreutils-8.9 の ja.po しか見ていませんから、--help でも
   # すでに表示がおかしいのかもしれません。

   もうひとつは、ざっと見ただけでも、翻訳がおかしいところが
   いくつかありました。例を挙げると、ls の「説明」の冒頭。
   「FILE に関する情報を一覧表示します (デフォルトは現在の
   ディレクトリ)。-cftuvSUX および --sort が指定されない限り、
   要素はアルファベット順で並べ替えられます」。「および」だと、
   「-cftuvSUX と --sort の両方が同時に指定されない場合」とも読めて
   しまいます。

   もう一つ例を挙げます。ls の -C オプションの説明。「要素を
   列ごとに並べる」。現行 man ページの「ファイルを複数列でリスト
   表示する」の方が、まだよくわかります。

   # --help は簡潔な説明を旨とするものです。説明が (そして、その翻訳が)
   # すこしぐらい言葉足らずでも、実用になるだろうと思います。
   # 一方、man ページはもうすこし詳しい説明をするものです。
   # ですから、わたしとしては、hepl2man で --help の出力から
   # man ページを作るのは、あまりよい考えだとは思えません。
   # もっとも、coreutils の開発元は、それなりに筋が通っています。
   # 本格的なマニュアルは info ファイルで提供し、--help と man
   # ページは基本的に形式が違うだけという考え方ですから。

   それに、文体の統一という問題もあります。たとえば、「です、ます」と
   「だ、である」が混じっているのをどうするかとか。

   いづれにしても、JM から配布する前に、かなり徹底的なチェックが
   必要です。まあ、赤星さんとしては、それをするために JM の
   リポジトリに登録したいということなのでしょうが。

   # それにしても、po ファイルの翻訳チームでは、翻訳のチェックを
   # どうやっているのでしょうか。どんなに上手な人でも、誤訳や
   # ケアレスミスは避けられないものですから、他の人に読んで
   # チェックしてもらうことが絶対に必要なのですが。

   # もともと、help2man は man ページの粗形を作るもので、ある程度
   # 手を入れて完成版の man ページを作るという使い方をするものでは
   # ないでしょうか (言わば自動翻訳ソフトみたいなものですから、
   # どんなに優秀でも、最終的に人間が「てにをは」を直すぐらいは
   # やる必要があると思います)。coreutils の英語 man ページなら、
   # 人間が手を入れる必要がないレベルのものを help2man で作成できる
   # のでしょうけれど、翻訳版 (それも日本語訳) の場合、help2man で
   # 変換して、一丁上がりというわけにはいかないと思います。
   # po ファイルの方で --help で出力する文章を、man ページでも
   # 使えるように工夫しておいてくれたら、かなり楽になるでしょうけれど。

d) coreutils の開発元や日本語翻訳チームでは、他の組織が help2man で
   作った翻訳 man ページを加筆訂正して、配布することを認めているので
   しょうか。言い換えると、po ファイルの一部を改変し、別の形式にして
   配布することを認めているのでしょうか。「COPYRIGHT」セクションの
   「you are free to change and redistribute it.」をそう解して
   よいのかもしれません。その場合、man ページのヘッダにどういう
   断り書きというか、謝辞というか、翻訳履歴を書けばよいのか。
   そもそも書いてよいのか。help2man で作った man ページの冒頭には、
   「DO NOT MODIFY THIS FILE!」なんて書いてありますけれど。

e) JM で改訂版を作る場合は、それなりのルールがあります。つまり、
   翻訳履歴をきちんと書いて、誰が前の版を書き、誰がそれを改訂
   したのか、文責をはっきりさせるということ。また、JM で翻訳の
   チェックをするときは、翻訳者とチェックする人が直接向き合っている
   わけです。ところが、coreutils の日本語 po ファイルから man ページを
   作って、それをチェックする場合には、言わば、欠席裁判になって
   しまいます。それで構わないのか、手を入れるのはどこまで許されるのか、
   お互いに気まずいことになりはしないだろうか、などと考えてしまいます
   (逆に、感謝されるかもしれませんが)。権利の問題だけでなく、気持ちの
   問題もあると思うのです。ですから、一番よいのは、po ファイルの
   翻訳者に投稿していただくことですし、翻訳チェックも coreutils の
   翻訳チームの方で完了していることなんですけれど。

f) とにかく、101 個の man ページがあります。JM にとっては、事実上、
   101 個の原稿が投稿されたのと同じことになります。チェックして、
   必要なら手を入れるとして、だれがライター役や編集者役を務めるのか。
   どういう体制を作って、この課題にのぞむのか。

   man ページにインクルードする「未訳の追加原稿」は、実質 10 個
   くらいですから、こちらの翻訳は比較的簡単に何とかなると思います。

g) po ファイルの翻訳がもうすこしよくなるまで、待ちたいという
   退嬰的な気持ちがわいてきます。coreutils のコマンドなんて基本的な
   コマンドなんだから、古いマニュアルで十分に役に立つ。新しい
   オプションが追加されているにしても、そんなものはまず使ったりしない。
   英語マニュアルまで調べたりしない一般ユーザなら、とくにそうだろう。
   古いマニュアルは古いかもしれないし、誤訳だってあるかもしれない。
   しかし、何度か書き直されて、内容的にかなりしっかりしているはずだ。
   po ファイルの翻訳がもっとよくなるまで、今のマニュアルで間に合う
   のではないか。でも、待っていれば po ファイルがよくなるかどうか
   わかりませんし……。

考えておかなければならないことは、まだまだあると思います。

-- 
長南洋一




linuxjm-discuss メーリングリストの案内
Back to archive index