長南洋一
cyoic****@maple*****
2011年 1月 23日 (日) 13:11:41 JST
長南です。 元木さんのメールより [JM:00113] > > - 技術的な文書は、意識して、主語/述語の対応関係を取っていかないと、 > 日本語の場合、前後関係か分かりにくくなりがちであること。 どんな文書についても言えることだと思います。また、主語/述語に かぎらず、文同士の接続関係などについても、言えることです。 ただ、「意識して、主語/述語の対応関係を取る」というのは、 それをきちんと見定めて、読者にわかるように書くということであって、 かならずしも明示的に書くことではないと思います。 それが「言うは易く、行うは難し」なんですけれど。 どの言語にも省略ということがあります。省略というのは、必要な 要素だけを提示することですから、うまく行けば、整理された めりはりのある文章になります。まずく行くと、曖昧になってしまう のですけれど。 日本語の場合、文脈によって充分わかるならば、主語を省略するのは 自然なことです。省略によって主語がわからなくなるようなら、それは 日本語として出来の悪い文章なのです。 元木さんがおっしゃったことを、私流にまとめると−− 「xargsは、空白や改行で区切られた一連の項目を ...」の主語は xargs である。しかし、その主語が「このとき、... その後ろに 追加して行く」まで続いているようには感じられなかった。 そのため、一見したとき、「一連の項目は」の格が何かにとまどい、 主語/述語の対応がおかしいと思った。 # 我々の頭には、「検索の優先順位」のようなものがあるのではないか # と思います。ある言葉の格がはっきりしないときは、まず主格を # 試してみる。それから、目的格 ... といった順番。 わたしの方は、「xargs は ... 実行する。このとき、... 追加していく」 と続くのだから、主語が同じであることは、文脈からわかるだろうと、 まあ、たかをくくっていたわけです。そして、「initial-argument と いう引き数に対して、標準入力から読み込んだ項目という引き数の方は、 どうかというと」という意味で「は」を使った。 # 前のメールで、「は」は主題を取ると言いましたが、「主題」と # 言っても、そのくらい軽い意味のこともあります。ちなみに、 # 大野さんの用語は、正確には「題目/説明」でした。 マニュアルはひとに読んでもらうものですから、構文がおかしいと 思う人がいることは、その文章に問題があるということです。 つまり、文脈の影響の及ぶ範囲について、わたしの判断が甘かった ということ。では、どうしたらよいのか。対策が三つほどあります (ほかにもあるでしょうが)。 1) 「一連の項目は」と「は」で受けて、受け身にする。 2) 「このとき、... xargs は ... を」と、xargs を主語に据える。 3) 「一連の項目を」と「を」で受けて格をはっきりさせることで、 主語は別にあると暗示する。 どれも立派な解決法だと思いますが、どれにも問題があります。 1) は、ひとつの流れの文章の中で、主語の交代が起きるのが気になります。 2) は、3) ですむことなら、同じ主語を繰り返すのが冗長に感じられます。 3) は、文脈に頼って大丈夫かという心配が、相変わらず残ります。 わたしとしては、3) にさんざんこだわった末に、たぶん 2) を選ぶ ことになるだろうと思います。まあ、自分が考えた文章が可愛いという だけかもしれませんけれど。 -- 長南洋一