本ページではUnivalent GNU/Linuxと他のLinuxディストロやOSを比較する。Univalentの利用が適切かどうか迷っている方のために簡単な説明を加えよう。 ある程度役には立つかも知れないが、興味を持ったディストロを試して比較を行なうのが最善策である。各プロジェクトの(可能ならば)日本語ページへのリンクを貼ってあるので、そのサイトからダウンロードするのも良い。

Debian系

パッケージ管理システムにdpkgを用い、フロントエンドとしてAPTが存在する。中でも不安定版より派生したUbuntuは初心者向けとして有名である。

Debian GNU/Linux

  • Linuxディストロの中で最も巨大なプロジェクトで、コミュニティベース。Univalentは同人サークル「新日本放送」が開発や流通を行なう小規模なプロジェクトである。
  • DebianはDebian系最上流のディストロ。一方UnivalentはArch Linuxをベースに開発が行なわれる。
  • Debianは安定版のみなら6万弱、不安定版を含めればならそれ以上の数のバイナリパッケージを利用できる。Univalentで利用できるバイナリパッケージの数はそれには及ばないが、ソースパッケージ「AUR」を含めるとその数は拮抗する。
  • 外部ソースからのパッケージ作成を楽にするPorts風システムがUnivalentには存在する(Arch Build System)。Debianには存在せず、大きなバイナリリポジトリに頼っている(これはUnivalentにも言える。なぜならUnivalentはArch及びNJBそれぞれの公式リポジトリの他、作成済みAURパッケージを配布している「Chaotic AUR」が追加されているからである)。
  • Debianは100%自由ソフトウェアであるのが理念であるが、Univalentはそれより甘く、GNU基準でフリーでないソフトウェアも含まれる。
  • Debianのインストールメディアは完全フリー版の他、制限付きパッケージが同梱される「nonfree」版が存在する。そのようなパッケージはUnivalentには同梱されず、疑似メタパッケージ「univag-restricted-extras」を別途導入する必要がある。
  • Debianは安定度が高くパッケージは「凍って」おり、2年毎に公開される一つのバージョンが5年間もサポートされる。一方UnivalentはArch同様、DebianのUnstable相当であり、新しいパッケージを利用できる。
  • Debianはパッケージに様々なパッチが追加されているが、UnivalentはArchのリポジトリやパッケージを用いるため、パッチは次回のリリースで修正される不具合の修正など最小限に抑えられている。
  • Univalentはx86_64アーキテクチャのみの対応。Debianはその他i686、ARM、mipsなどに対応する。
  • DebianもUnivalentも独自リポジトリを公開する際は別途サーバーを用意する必要がある。なおリポジトリの作成自体は、Debianは「reprepro」、Univalentは「repo-add」でできる。

Ubuntu

  • 英カノニカル社が中心となって開発が続いている。Univalentは日本の新日本放送が開発をする。
  • UbuntuもUnivalentも上流のディストロが存在する。前者はDebian、後者はArchがベース。
  • Ubuntuはユーザーに優しい。UnivalentはUbuntuほどではないが、ある程度の初期設定はなされている。
  • 外部ソースからのパッケージ作成を楽にするPorts風システムがUnivalentには存在する(Arch Build System)。Ubuntuには存在せず、大きなバイナリリポジトリに頼っている。
  • UbuntuにはPersonal Package Archivesというユーザーが独自に作成したパッケージを公開できるようにするサービスがある。UnivalentはPPAのような自作リポジトリをABSで作成できるが、パッケージサーバーは自分で調達する必要がある。OSDNやGitHubなど無料で使えるサービスもあるのでそこに公開しても良い。
  • Ubuntuは半年毎に更新がある。Univalentはローリングリリースで、毎月初旬にインストールメディアが更新される。
  • Ubuntuは公式のGNOME版の他、コミュニティによりPlasma、LXQt、Xfce、Cinnamonなどのデスクトップが異なるリミックス版が開発されており、一部は公式認定を受けている。Univalentは新日本放送によりLXQt、Xfce、Plasmaなどのフレーバーが開発されている。
  • Ubuntuには日本語機能を強化した「Japanese Remix」が存在する。Univalentには英語版と日本語版のディスクが存在する。
  • UbuntuもUnivalentも、インストールメディアに同梱できない制限付きパッケージを別途導入する必要があり、一部はメタパッケージにて導入可能である。

Linux Mint

  • MintはUbuntuより派生し、後にDebianベースのLMDEが追加された。UnivalentはArch系ディストロで、ビルドシステムや殆どのパッケージはそこに依存する。
  • Mintには「Mint Tools」なる簡易保守用グラフィカルツールが含まれる。UnivalentはAlter Linux風のコマンドラインツール「Univalent Tools」が同梱される。

Kamuriki Linux

Kamurikiとの比較も参照されたい。

  • Univalentと同じく新日本放送が開発をする。
  • KamurikiはUbuntu LTSベースで、セミローリングリリースを採用(偶数年の5月に大規模更新がある)。一方Univalentは完全ローリングリリースで、1カ月毎にインストールメディアの更新がある。
  • 開発思想にも違いがある。KamurikiはMS-Winの環境置き換えが、UnivalentはArchにおける日本語環境とGUIの提供が主な目的である。
  • KamurikiにはWineが標準で搭載され、初期設定を終えればMS-Winのソフトウェアの利用ができる。UnivalentにはWineは同梱されていないが、導入を自動化するスクリプトが同梱される。
  • 上記「Wine」以外にも、KamurikiはMS-Win(とりわけ2000以前の標準)のような操作が可能になっている。UnivalentはLXQt、Xfce、Plasma、Cinnamon、MATE版で上記のような操作方法を採用している。
  • KamurikiにはPacmanのコマンドでAPTを操作できる「Pacapt」が、Univalentにはその逆が可能な「aptpac」が搭載される。

open.Yellow.os

  • o.Y.oはDebianの安定版(当初は不安定版)より派生した。UnivalentはArchより派生したOSである。
  • o.Y.oはパッケージの更新を「apt update && apt upgrade」を自動化したスクリプト「pacup」で行なえる(元々EtupOSで用いられていたモノ)。Univalentは「pacman -Syu」か「yay」で更新できる。
  • PC-FREEDOMのコダシマタカヒデ氏が企画し、最初期のみ開発メンバーに学生がいた。Univalentは学生主導のプロジェクトである。
  • どちらも日本語に地域化されている。というかo.Y.oは現時点で日本語版のみのリリースである。
  • o.Y.oはローリングリリースを採用する予定である。Univalentはローリングリリースである。

Arch系

パッケージ管理にPacmanを用い、フロントエンドなしで様々な操作を可能にしている。

Arch Linux

  • Archはフルスクラッチで書かれた。UnivalentはArchベースのディストロである。
  • ArchはDIYアプローチを好むユーザーのために開発されているのに対し、Univalentは比較的ユーザーフレンドリーなシステムを提供する。
  • ArchにはPythonで書かれたテキストベースのインストーラーが存在する。UnivalentはCalamaresなるGUIインストーラーを用いる。
  • 両者共にローリングリリースを採用。

Manjaro

  • ManjaroもUnivalentもArchベースであり、ローリングリリースを採用する。
  • UnivalentはArchのリポジトリを共有するため、最新のパッケージを利用できるが不安定な部分がある。一方ManjaroはArchからパッケージをコピーして安全性を確かめてから自前のリポジトリに置いている。そのためパッケージはArchより若干古くなる。
  • Manjaro公式のデスクトップフレーバーはXfce、Plasma、GNOMEである、Univalentは加えてLXQt、Cinnamonなどが利用できる。

Alter Linux

  • Alterは日本の学生サークル「Fascode Network」が開発する。Univalentは現役高専生が主導して開発を行なう。
  • Alterはx86_64の他、公式でi686に対応している。Univalentはx86_64のみ。
  • Alterで利用できるデスクトップはXfce(32、64bit共通)、Plasma、GNOME、Cinnamon、i3wm(以上64bitのみ)、LXDE(以上32bitのみ)。UnivalentではLXQt、Xfce、Plasma、i3wm、Cinnamon、GNOME、MATE、Unityを利用できる。
  • どちらも日本語版の配布が行なわれる。
  • どちらもCalamaresでGUIを用いた導入が可能。
  • どちらもDebian系からの移行が目的の一つである。そのためUnivalentにはAlter Linuxと同一のプロジェクトが開発した「aptpac」が搭載されている。この場を借りて感謝を申し上げます(人▽`)
  • Univalent ToolsはAlter i3フレーバーの設定ツールが基になっている。

Alchg Linux

  • AlchgはAlchg Projectが開発している。Univalentは同人サークルによる開発である。
  • AlchgはArchのライブテスト環境の提供を目的としているため、固定ドライブへの導入は archinstall などで行なう。Univalentはすぐに使用できるデスクトップ環境の提供を目的とし、Calamaresで導入できる。
  • Alchgは上流のArch同様、「Keep it simple, stupid!」の合言葉の下活動をしている。Univalentはその点には甘く、システム(特に外観)は比較的簡素化されていない。

Gentoo系

Gentoo Linux

  • GentooはUnivalentと同じくローリングリリースを採用。そのためパッケージは比較的最新に保たれる。
  • UnivalentはPacmanで、GentooはPortageでパッケージを管理する。どちらもPorts風システムを完備する。
  • Univalentは作成済みのバイナリを導入するシステムであるが、ABSでソースコードからの導入も可能である(AURがその最たる例)。一方Gentooは完全にソースコードから導入する。PortageにはUSEフラグが存在し、柔軟にシステムを構築できる。
  • Gentooはその移植のし易さからi686、x86_64、ARM、MIPS、IA-64などに対応する。Univalentはx86_64のみ対応。

Chromium OS / Google ChromeOS

  • ウェブアプリケーションの実行に重きを置いたOSである。Univalentはi3-wmフレーバーがこれに相当するが、23.03以降搭載されるブラウザーはFirefoxである。
  • どちらもローリングリリースを採用する。
  • 前者はオープンソース、後者はプロプライエタリである。Univalentはオープンソースである。
  • ウェブアプリケーションの他、上記Portageを用いたソフトウェア導入の成功が報告されている。Univalentも同様に、PacmanやAURでパッケージの追加が可能である。
  • ChromeOSではAndroidやDebian(サンドボックス上ではあるが)も動作する。UnivalentではVirtualBoxやQEMU仮想マシンを導入するか、debootstrapなどで環境を構築してchrootでそこに入るなどして実現可能である。

Fedora系

パッケージ管理システムにRPMを用い、フロントエンドとしてDNF(かつてはYum)が存在する。

Fedora

  • FedoraもUnivalentもデスクトップ環境を選りすぐっている。
  • Fedoraの標準のデスクトップ環境はGNOMEではあるが、Plasma、Xfce、LXQt、MATE-Compiz、Cinnamon、LXDE、SoaS、i3-wmといった「Spins」と呼ばれるフレーバーが存在する。UnivalentはLXQtが標準で、様々なデスクトップフレーバーを利用できる。
  • Fedoraはフリーソフトウェアの思想のため、公式リポジトリには自由でないソフトウェアを用意していない。そういったパッケージを導入する場合はサードパーティーのモノを追加する必要がある。Univalentはどちらかというと厳格ではなく、各々の選択に任せている。
  • UnivalentはArch系であるため、FedoraにはないPortsシステムが存在する。
  • FedoraもUnivalentもヘヴィーユーザーや開発者をターゲットにしている。
  • Fedoraはコミュニティベースで、レッドハット社から支援を受けている。Univalentは同人サークルが開発を行なう。

Red Hat Enterprise Linux

  • レッドハット社により開発・販売がなされている。文字通り商用であるが、個人利用は16台まで無料。Univalentは完全無料であり、趣味の範囲の開発ではあるがゆくゆくは寄付を募る予定である。
  • RHELはFedoraの、UnivalentはArchの成果を活用している。
  • RHELはおおよそ2年毎にメジャーアップデートがある。Univalentはローリングリリースである。

CentOS / AlmaLinux / Rocky Linux / MIRACLE LINUX 等々…

  • 上記RHELのソースコードを基に開発されたディストロ達。レッドハット社はRHELに含まれるソフトウェアのソースコードを無償で公開しているが、それを基に商用パッケージや商標を除去して開発をしている。以下これらの総称を「RHEL系」と表記する。※レッドハットの意向を受けてCentOSの開発が終了したが、Alma、Rockyなど後継のディストロが存在する。
  • ライセンス代が無料であるがサポート期間が約10年とかなり長い。Univalentはライセンス代が無料であり、サポート期間は皆無とも永久ともとれる。
  • MIRACLEは元々Asianuxの一環として開発されていた。そのためUnivalent同様日本語に強い。

その他Linux

Slackware

  • パッケージ管理について。Arch系であるUnivalentはPacmanによる自動的な依存解決とシステム更新を行なう。Slackwareの場合は多くの場合、手動で依存解決を行なう。一応「slackpkg」なるフロントエンドも存在するが、公式のリポジトリが(少なくともArchよりは)質素であるため出番も減るという説も存在する(参考)。
  • SlackwareはBSDスタイルのinitスクリプトが標準である。Archもかつてはそうであったが、最近はsystemdが用いられるため、Univalentもそれに準拠している。
  • UnivalentにはPorts風システム「ABS」とパッケージ作成スクリプトの集合体「AUR」が存在する。Slackwareにもよく似たslackbuilds.orgなる半公式リポジトリが存在する。
  • UnivalentもSlackwareも標準で日本語に対応している(前者は日本語版ISOの配布で対処)。Slackwareより派生したディストロには、日本語で使う前提で開発されている「Plamo Linux」というのもある。
  • Univalentは完全ローリングリリースである。Slackwareは安定的かつ保守的なリリースサイクルを採用する。

Android

  • Androidは主に携帯端末をターゲットにしたOSである。一方Univalentはパソコン向けである。
  • AndroidはARM、MIPS、i686、x86_64に対応する。Univalentはx86_64のみの対応。
  • AndroidはカーネルがLinuxであるが、その他の部分は様々な技術が用いられるためGNU/Linuxではない。一方UnivalentはGNUの成果物が用いられ、名称にもある通りGNU/Linuxである。
  • 基本操作は、Androidは指を使った直感的な動作が可能なタッチインターフェースとなっている。一方UnivalentはMS-Win風のUIを採用しているフレーバーが多く、主にキーボードとマウスを用いて操作する。
  • Android Developersによる「AOSP版」の他、各サードパーティーが独自に加工したものが存在する。Univalent派生は現時点で新日本放送のみの開発である。

SUSE系

  • SUSEは元々Slackware系だったが、現在は独立している。UnivalentはArch系である
  • SUSEはRPMパッケージフォーマットを利用する。UnivalentはPacman形式である。
  • SUSEはグラフィカルな保守ツール「YaST2」が同梱される。Univalentにはテキストベースの「Univalent Tools」が付属するが、YaST2ほど高機能ではない。

CRUX

  • CRUXは最小主義ディストロで、KISS原則に沿っている。J. Vinet氏はこれに感銘を受けてArchを開発したという。一方Univalentは最小主義ではないが中身は比較的簡素化されている。
  • CRUXはBSDスタイルのinitスクリプトを用いる。Archもかつてはそうであったが、最近はsystemdが用いられるため、Univalentもそれに準拠している。
  • Univalentはローリングリリースシステムを採用するが、CRUXは約1年毎に最新版が公開される。
  • どちらもPorts風システムを搭載する。
  • Univalentではpacmanによりバイナリのパッケージ管理やArch Build Systemの動作を行なう。CRUXはコミュニティによって開発されている「prt-get」と呼ばれるシステムで、Ports風システムと連携して依存解決やビルドを行なう(但し導入の際はバイナリを使用する)。
  • どちらも公式にx86_64のみを保証する。
  • Univalentはローリングリリースに則った大量のバイナリリポジトリ、更にArch User Repositoryを用意する。CRUXは控えめなコミュニティリポジトリと軽量な公式サポートのPortsシステムを提供する。

Linux From Scratch

  • LFSはスクラッチからLinuxディストロを作るためのドキュメント。ディストロと呼べるかすら怪しい。アーチャーよりもドSな調教師向きかも?
  • UnivalentはArchとリポジトリを共有するが、LFSにはオンラインリポジトリすらない。技術のある方ならばPacmanのようなパッケージマネージャーを書いてもいいかも。

その他オペレーションシステム

この節ではLinux以外のOSとの比較をする。

BSD系

  • BSD系は同一の起源を持つ。AT&TのUNIXコードに由来し、カリフォルニア大学バークレー校の成果を基に開発され、無料で自由で再配布が可能な*NIXシステムを提供する。
  • Univalent(というかArch)とBSD系は共にPortsシステムのコンセプトを共有する。後者はGNU/Linuxカーネルやシェルなども同一のリポジトリで開発される。
  • BSDライセンスは著作権者を、GPLではソースコードが保護される。UnivalentはGPL第3版の下で配布が行なわれる。

macOS

  • Macintosh専用OSで、第10版からBSD系をベースにしている。
  • macOSは基本的にはクローズドソースだが、Darwinなど一部オープンソースのコンポーネントが含まれる。Univalentは完全オープンソースである。
  • macOSはv10.6以降でx86_64での動作が、v11以降では加えてARM64での動作がサポートされる。Univalentは現在x86_64のみの対応である。
  • macOSのカーネルはXNU (XNU is Not Unix)であり、先述のDarwinの一部として公開されている。UnivalentのカーネルはLinuxであるが、改造版である「LTS」、「Hardened」、「Zen」などを選択可能。

Windows

  • 恐らく全世界で最も普及しているであろうパソコン向けOS。Univalentはそれよりもかなりニッチな市場向け。
  • Windowsはライセンス料がかかるが、Univalentは無料である。そういった点においてUnivalent(というか大抵のLinux)は懐に優しい。
  • Windows10において、Hyper-Vを用いた仮想技術を応用したWSL2というシステムがある。これを用いてUbuntuなどのGNU/Linuxの動作を見込める。一方UnivalentにはWineという互換レイヤーを用いてWindowsのソフトを動かせるようになっている(どちらも別途導入が必要)。
  • 実はWindowsにはモバイル版が存在した時期がある。Univalentでは現状そのようなモノを用意する予定はないが、Arch Linux ARMとPlasma Mobileを組み合わせる事で理論上は実現可能。ただやはり時間と労力が足らなくてできないのが現状である。