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NEC Express5800シリーズ「1Uハーフサーバ」導入事例

カゴヤ・ジャパン株式会社

NECの1Uハーフサーバで電力コストを削減し、サービスの競争力を強化

 京都府に本社を置くカゴヤ・ジャパン(以下、カゴヤ)は、レンタルサーバを中心としたインターネット・サービスを提供する通信事業者である。レンタルサーバは価格競争が激しいサービスだが、カゴヤではサービスの質を落とさずに競争力を高めるために、NECの1Uハーフサーバを大量導入しているという。

 “カゴヤ”という社名は、先々代が始めた茶摘み籠の販売業に由来する。その後、代替わりしたカゴヤはLPガスの供給に業種を変え、1998年からはインターネット事業を開始。2002年に社名を「株式会社カゴヤガス設備」から「カゴヤ・ジャパン株式会社」に変更し、現在はインターネット事業に特化した会社となっている。

カゴヤ・ジャパン
代表取締役社長
北川 貞大氏

 そもそもカゴヤがインターネット事業を始めたきっかけについて同社代表取締役社長の北川 貞大氏は、氏自身が「専用線でインターネットを思う存分使いたかったから」だと言う。当時は「インターネットはダイヤルアップ接続で」という時代。「テレホーダイ」のようなサービスはあったものの、基本は従量課金で通信速度も現在からすれば信じられないくらい遅かった。

 しかし、専用線は高価で普通は大学や企業でないと手が出せない。「確かに投資費用はかかりますが、インターネット利用者がこの先爆発的に増えるはずだと思い、インターネット接続サービスを始めたわけです」(北川氏)。その後は会員数の増加に合わせるかたちで回線を増強。インターネット事業は、カゴヤを支える中心的なビジネスとして成長していった。

 当時はカゴヤと同じような地域プロバイダが数多く誕生したが、それらが2000年を前後して次々と撤退していくなか、カゴヤではいち早く提供していたレンタルサーバ・サービスにビジネスの軸足を移すことで、事業を拡大させてきた。

電力問題に直面し、1Uハーフサーバを選定

 さて、カゴヤでは海外メーカーのPCサーバを利用してレンタルサーバ・サービスを提供していたが、新しいサーバを導入したところラックの電源がまるごと落ちるというトラブルに見舞われたという。

カゴヤ・ジャパン
取締役業務部長
川野 純一氏

 その原因は、サーバの消費電力増加による電力不足。新しいサーバは処理能力が向上していたが、それ以上に消費電力も増えていた。「このトラブルで電力問題に本気で取り組まなくてはと痛感しました」と取締役業務部長の川野 純一氏は振り返る。せっかくサーバの処理能力が向上しても、1ラック当たりのサーバ数が減ればその分多くのラックを借りなければならない。レンタルサーバ・サービスを提供するうえで、固定費の増加はサービスコストの増加に直結してしまう。

 そこで省電力なサーバを求めてサーバを選定することになったが、それまで海外メーカー一辺倒だったこともあり、国内メーカーを試してみることに。海外メーカーは価格の安さが魅力だったが、営業面、特に企画・提案の面で不満を感じていたという。

 「サーバ選定に当たって国内メーカー数社に声をかけたのですが、NECの営業担当者がこちらの要望を丁寧に聞いてくれて、『現在開発中の省電力サーバがあるのですが、試してみませんか?』と評価機を持ち込んでくれました」(川野氏)。それが1Uハーフサーバ「Express5800/i110Ra-1h」だった。「“小さい”、“軽い”というのが第一印象でしたね」(川野氏)。

Express5800/i110Ra-1h

 サーバ選定責任者だった川野氏は、実際にその消費電力をワットチェッカーで計ってみたという。「起動時、アイドル時、高負荷時の3パターンで計測したところ、カタログどおりに消費電力が低いことに驚きました。当時使用していた1Uサーバに比べ、消費電力は半分近くになっていたと思います」。

 当時のカゴヤではレンタルサーバのOSとしてVine Linuxを利用していたが、1Uハーフサーバではこれも問題なく動いた。エンジニア陣の感触も良好で、正式発売(2005年7月)から間をおかずに100台ほどを導入。その後も定期的に追加導入を行い、現在では後継機種の「Express5800/i110Rb-1h」(2006年9月発売)を含めて500~600台ほどの1Uハーフサーバが主に共用タイプのレンタルサーバとして稼働しているという。

 川野氏は1Uハーフサーバの性能、信頼性にも太鼓判を押す。「共用サーバは負荷の高い使われ方をするものですが、性能が問題になったことはないですね。安定して動作してくれています」(川野氏)。

さらなる事業拡大に向けて自社データセンターを構築

 1Uハーフサーバの選定には、当時から進められていた自社データセンターの建設も影響している。「自前のデータセンターを」という考えには、後ほど触れるハウジング・サービスの拡大という狙いがあるが、既存のデータセンターの電力事情とセキュリティに不満を感じていたという事情もある。

 「たいていのデータセンターではオプションで電力を追加できますが、フロア当たりの供給電力が決まっているので借りているラックすべてに電力を追加することは難しい。結局、ラックを余分に借りてその分の電力を回すということになり、無駄なコストが発生します。また、セキュリティ面での不安もありました。データセンターではどこでも入館手続きが行われていますが、たとえば退職したエンジニアが悪意を持って侵入を試みたような場合に、それを阻止できるかどうか。実際にそのようなトラブルが発生したことはないのですが、何かあってからでは遅い。無駄を省き、万全のセキュリティ体制を敷くためには自社データセンターが必要という結論に至ったわけです」(北川氏)

 自社データセンターに設置する場合でも、サーバの消費電力には重要な意味があるという。「データセンターでラックを借りる場合は、20Aや30Aといった供給可能な電力を単位として課金されますが、自社でデータセンターを持つとなると実際の使用電力がそのまま電気代としてかかります。自社データセンターには高い電力供給能力を持たせるつもりでしたから電力不足になることはないとしても、電力コストを削減するうえで省電力なサーバは必須です」(川野氏)。

 こうしたカゴヤの要求にマッチしたのが、NECの1Uハーフサーバだったわけだ。

最新設備を備えた「けいはんなラボ」

けいはんなラボ

 2006年に竣工した自社データセンター「けいはんなラボ」は、高度な設備を備えた現代的なデータセンターとなった。

「免震アイソレータ」(上)と「弾性すべり支承」(下)

 免震構造を採用した鉄筋コンクリート造3階建てのデータセンターは、地下に設置されたゴムと鉄板を積層構造にした「免震アイソレータ」と揺れを吸収・収束させるための「弾性すべり支承」に支えられており、建物全体を地震から守る構造になっている。もともと活断層がなく地震が少ない地域に建設されていることもあり、地震に対する備えは完璧と言っても過言ではない。

 また、受電設備では、ループ状に連結された配電盤に6,600Vの引き込み電源を接続。これにより、配電盤の増設などの電気工事も既存設備を稼働させたまま行えるようになっている。ちなみに、電源設備は400KVAのUPSと1,000KVAのガスタービン発電機でバックアップされており、大規模停電時にも32時間無給油で電力を供給できるようになっている。なお、電力は1ラック当たり平均して40Aまで供給でき、1ラック最大で60Aまで対応している。

サーバルーム入口に設置された生体認証装置

 セキュリティ面では、赤外線センサーと監視カメラによる敷地内への侵入検知、建物入口でのカードによる認証、有人受付での入退館管理、サーバルーム入口でのカードキー+生体認証といった多重の侵入対策が実施されている。また、ラックへのゲージ設置にも対応している。セキュリティ面はデータセンター建設の主要因となっていただけに充実した対策と言えよう。

1Uハーフサーバ向けに冷却システムを最適化

 川野氏によると、けいはんなラボの設計で最も力を入れた部分の1つが冷却システムだという。「データセンターではサーバも電力を消費しますが、それと同じくらい冷却に電力を使います。ここをいかに抑えるかがデータセンターのコスト削減のポイントになります」(川野氏)。

 そこでけいはんなラボでは、サーバ・ルームの両サイドに設けた空調機室から床下を通じて冷気を供給する床下吹き上げ方式を採用した。これにより、サーバ・ルームに立ち入らずに空調機のメンテナンスが行えるため、空調機を交換する場合でもサーバ・ルームにほこりが入り込むのを防止でき、セキュリティ面も強化できる。また、複数台の空調機でサーバ・ルーム全体の冷却を行うため、空調機が故障した場合でもサーバを過熱させることなく交換作業が行える。

ラック間の通路部分には空調の吹き出し口が設置されている

 さらに、1Uハーフサーバを意識した工夫も凝らされている。当初はラック間通路床面の吹き出し口が固定された設計になっていたが、床パネルを入れ替えることで、吹き出し口を自由に配置することができるようにしたのだ。1Uハーフサーバは1Uスペースにラックの前後から2台収容することができるが、この場合はラックの前後の通路に吹き出し口を設けて両面から冷気を吸気できるようにする。一方、一般的な1Uサーバの場合は背面からの廃熱をそのまま天井の排気口に導くために、背面通路の吹き出し口をふさぐ。このように、サーバの特性に合わせて空気の流れを調整することで、データセンター全体での冷却コストを削減することができるようになる。

 なお、冷却システムの改善は現在も進められており、サーバからの排気が吸気側に循環してしまうことを防ぐために、ラックと天井排気口の間にダクトを設置することを検討しているそうだ。

サービス向上のために省電力化は必須

 けいはんなラボには、カゴヤが現在注力しているハウジング・サービス「データセンタープラス(DC+)」の中心基地としての役割もある。データセンタープラス(DC+)はマネージド型のハウジング・サービスで、サーバの構築からトラブル対応まで顧客の要望に合わせて柔軟なサービスを提供している。テレビ会議システムを使って、エンジニアの作業を見ながら指示を出すこともできる。

 「これまでデータセンターというと『場所貸し』と言ったイメージが強かったと思います。受付や設備を保守する担当者はいても、サーバのエンジニアはいないというところが多かった。しかし、これからはサーバの管理も含めたサービス、レンタルサーバとハウジングの間を埋めるサービスが求められていく時代になってくるはずです。そして、こうしたサービスは我々の強みが発揮できる領域でもあります。カゴヤにはレンタルサーバで培ったノウハウがあり、Linuxの扱いに長けたエンジニアが365日24時間体制でデータセンターに常駐しています。『来ていただかなくてもいいデータセンター』というのが理想的なかたちですね。実際、東京を拠点とするお客様がいらっしゃるのですが、システム構築時のトラブル対応に満足していただけたようで、今度ラックを追加するというお話をいただいています。このDC+をレンタルサーバと並ぶ事業の柱に成長させるというのが現在のミッションです」(北川氏)

 さらに、今後のデータセンター事業について北川氏は次のように語る。「レンタルサーバとハウジングの両方に言えることですが、サービスを充実させても、そのコストをそのままサービス料金に転嫁するわけにはいきませんし、かといって利益率を下げるとサービスを向上させるための投資ができなくなってしまいます。その分のコストをどこかで捻出する必要があるわけです。1Uハーフサーバの採用やけいはんなラボの冷却システムが端的な例となりますが、カゴヤでは省電力化を追求することで顧客に満足していただけるサービスを提供していきたいと考えてます」。

 ちなみに川野氏によると、カゴヤではデータセンタープラス(DC+)の顧客からサーバ選定時のアドバイスを求められることが間々あり、自社での実績から1Uハーフサーバを勧めることもあるという。カゴヤとNECのパートナーシップはこうしたかたちでも強化されていきそうである。


カゴヤ・ジャパン株式会社
http://www.kagoya.com






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